目と身体部位の負担

LCDノートのユーザーはLCDモニターのユーザーと比較して有意に目の疲れの評定が高い.その他のディスプレイ間では有意差は認められなかった.

一方,作業時間のページで示したようにLCDノートのユーザーは1日あたりのディスプレイ作業時間(5.38時間)がCRTユーザー(6.64時間)やLCDモニターユーザー(6.02時間)より有意に短かった.

したがって,LCDノートユーザーは1日あたりのディスプレイ作業時間がLCDモニターユーザーより短いのにもかかわらず,終業時の目の疲労感はLCDモニターユーザーより強いことになる.
図3-1 ディスプレイ別の終業時の目の疲労感
疲労感調査フォーム
LCDノートのユーザーはLCDモニターのユーザーと比較して有意に肩の疲れの評定が高い.その他の間では有意差は認められなかった.

すでに述べたようにディスプレイ作業時間は,LCDノートユーザーの方がLCDモニターユーザーより有意に短いのである.

図3-2 ディスプレイ別の終業時の身体部位の疲労感
 
ディスプレイ作業時間が長いほど確実に目の疲れは高まっている.1日あたり3-4時間までは,主観的な疲労感の評定では,すぐに回復するレベルである.

このデータを基にして,ディスプレイによる負担の違いや表示条件による負担の違いがどの程度であるか考察できる.

たとえば,LCDモニターとLCDノートの目に対する負担の差が,概ね3-4時間と5-6時間の差に対応しているなどの推測ができそうである.
図3-3 ディスプレイ作業時間と終業時の目の疲労感
 
目の疲れと同様ディスプレイ作業時間が訴えに大きく効いている.

くびや肩などは6時間以上のヘビーユーザーで訴えが顕著である.
図3-4 ディスプレイ作業時間と終業時の身体部位の疲労感 
 
50歳以上で目の疲れの訴えはやや低いように見えるが,終業時の目の疲労の訴えには年代間で有意な差は認められなかった.
図3-5 ユーザーの年齢と終業時の目の疲労感
 
30代で最も訴えが高く,40代,50代以上と低下する.30代において1日のディスプレイ作業時間が最も長かったこととも関係していると考えられる.回答者の属性と作業時間のページをご覧ください.
図3-6 ユーザーの年齢と終業時の身体部位の疲労感
 
肩の訴えが,視力を矯正しているユーザー群で有意に高い.次の図に示したように,視力の矯正の有無による5m視力には有意差は認められなかった.(目と身体部位は評価スケールが異なるがこの図では一緒に表示している)
図3-7 視力非矯正群と矯正群の目と身体部位の疲労感
 
視力を矯正しているユーザー群と矯正していないユーザー群で5m視力(自己申告値)には有意差は認められなかった.ただし,ディスプレイ作業で重要となるのは50cm視力である.作業姿勢のページをご覧ください.

自己申告値ではあるが5m矯正視力に差がないのに,上の図に示したように矯正群で肩こりの訴えが高いのは,視距離50cm程度のディスプレイに対しては過矯正になっているとも考えられる.
図3-8 視力矯正の有無と5m視力(自己申告値)
 
ディスプレイの輝度とコントラストが主観的な最適値に設定されていないと終業時の目の疲労感が有意に高くなる.

図中の「低すぎる」は,明るさもしくはコントラストの評価で3以下すなわち「やや低い」以下の評価をした回答者群,「高すぎる」は同様にいずれかが「やや高い」5以上の評価をした回答者群,「ちょうどよい」は明るさコントラスト共に「ちょうどよい」すなわち4の評価をした回答者群である. 明るさとコントラストで評価が逆方向の回答者は数名いたがここでは集計から省いた.

別ページの図7-4〜図7-10にこの問題に対応した調節機構の設計上の問題点を示した.
図3-9 明るさ・コントラスト感と終業時の目の疲労感
 
机上の作業空間の評価と終業時の肩の疲労感との関係.

机上の作業空間が「狭い」と感じている回答者群の方が「ほぼ満足」と感じている回答者群より終業時の肩の部位の疲労感が有意に高い.

VDT作業の筋骨格系の負担を軽減するために,充分な作業空間を確保することの重要性を示すデータである.

ユーザーが狭さを感じない机上の広さについては図8-10を参照のこと.
図3-10 机上の作業空間の主観評価と肩の凝りとの関係(図8-9に同じ)